しーずん見聞録

しーずんといいます。作った楽譜や書いたエッセイをここで公開しています。

【楽譜】人生は夢だらけ

楽譜

椎名林檎さんの楽曲。かんぽ生命のCM用に作られた歌です。のちにクラフトボスのCMにも起用されました。

3拍子ジャズ。長編ミュージカルのようなとてつもない曲です。

 

 

 

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楽譜はこちら (スコア11ページ + パート譜各3ページ)

https://drive.google.com/open?id=1It-nVQF0beuuvbI5p6F4Q9HAoq8eDy1S

 


1st

https://drive.google.com/open?id=1zlYKG1xC8TsuZPLk6zyW9zHFw8wcdpgC

2nd

https://drive.google.com/open?id=1Olqv2wFcLc2uvc5W8r-m1nLQ1m-I0xZN

3rd

https://drive.google.com/open?id=1SNXGcE4ECzF358duMSykVd32L3D-xzS7

4th

https://drive.google.com/open?id=1y16HA2wObZoG561vviB6kpiATTc2uOps

 

 ちょこっと解説

  • スイングの3拍子という、およそクラシックギターでは弾かれないジャンルです。少しだけBluezilianをイメージして作りました。原曲のスピードでスイング感を出すのはとても難しいです。
  • 大まかには2ndと1stがメロディ、3rdがコード、4thがベースのオーソドックスな構成ですが、役割は頻繁に変わります。それだけにパート間の音量調整が難しいと思います。
  • 原曲では後半ビッグバンド調になり爆発的に盛り上がりますが、この編曲では、前半のピアノのまま進んでいくイメージで作りました。
  • リハーサル番号Gの間奏部分に速度を落とさず突入しカッコよく決めたいです。

 

 

 ひとりごと

「人生は夢だらけ」なんて言葉だけ聞くと、能天気で何も考えていないとか、そんな甘くはいかないとか思うことでしょう。小学校の道徳の授業のような、ひどく嘘くさいものを感じてしまうものです。でもこの曲を聴くとそんな皮相的なメッセージを込めているわけではないということが分かることでしょう。

 

辛い思いをしたり、心が死んでいったり、でも時には幸せだと思えることがあったり、そうやって何度も浮き沈みしていって、そうやってにじみ出てきたものがこの曲であり、歌詞なのだと思います。表面上はビッグバンド調で能天気な曲に聴こえますが、歌詞にあるように、「酸いも甘いもどっちもおいしい」と思えるくらいの重さを経てきてからだと、言葉の持つ意味合いが大きく変わって見えてきます。

 

そしてなにより、そういう言葉は得てして難しくならない。

 

一周回ってきた人やモノというのは、そうでないモノと比べて、一見して表面上の違いが判りません。

円の上にポツっと点を打って上から見てみる。そしてその点を円周に沿って動かしていきます。元の位置に点が戻ったとき、何も変わっていない元通りのように見えるかもしれません。ですがその円を横から見たとき、円は平面ではなく、実は円柱だったということが分かります。すると、さきほど辿った点の一周がただ同じところを回ったのではなく、螺旋を描いて上に上昇していっていたということが分かります。

このように視点が違うだけで、同じに見えるものが全く違うものに見えることがあります。わたしが思うに、これが「一周回ってきた」ということなのだと思います。同じに見えても進んでいて、しかも実は一つ上の次元に進んでいる。これは進んでみたことがない観測者には到底理解の及ばないものなのだと思います。

 

さて、「人生は夢だらけ」もそうですが、軽さをもつ言葉の背景には、やはり重さが隠れているのかもしれません。例えるならば、長くて暗いトンネルを抜け出て初めて手に入れる軽さ。表面的ではなく、スッとこころを軽くしてくれるような言葉は、あまねく背景に「もがいてきた過去」があるとわたしは思っています。そのような経験をしてきた人は、苦しんできた過去を進んで他者に語ることはしません。でも、もがいて苦しんできたことが、そこはかとなく感じ取れる言葉を使うようになります。

そんな言葉や人にわれわれは魅力を感じるのかもしれません。

 

「人生は夢だらけ」という一見軽薄な言葉は、彼女がもがいて苦しんできた体験を経て出てきた言葉だからこそ、確かな重みをもった言葉として魅力を感じるのだとわたしは思います。